誰に見られていなくても


20200418

地道にオムレツの練習を続けている。ホットケーキの時と違って、材料の配分を探るというより正しいフォームを身につけるというかんじで、これはこれで楽しい。今日は自分がオムレツを作るところを録画してみた。フライパンの柄をトントン叩くとオムレツがくるっと返るはずなのに、わたしがやると反対方向に回ってしまう。今日は盛大に反対方向に回ったうえ、フライパンからはみ出して直火の上に落ちてしまった。自分の動画とYouTubeのオムレツの作り方動画を見比べると、自分は腕がグニャングニャンに曲がっていた。それが良くないのかも。

師匠と電話。留学先からなんとか帰ってきたと噂には聞いていたけど、まだ顔を合わせてない。
次はどういう仕事がしたいのと聞かれて、もう殺し合いの螺旋からは降りようと思ってると答える(比喩です。師匠がよくわたしたちの仕事のことをそう例える)。この仕事にはやっぱり才能みたいなものが必要で、わたしにはそれが無いんだって今回のことでわかった、言い出せなかったけど人殺しはもうやめる、人殺す奴は全員が人を殺したがってるんだと思ってる、そうじゃないからね、別に人殺さない人生が普通だから、って言ったら師匠はちょっとウケていた。
感じていることをそのまま師匠に言えたのは初めてだったかもしれない。いままではとにかく頑張る、他人を押し退けても頑張ることが大前提だった。そこまで頑張れないなんて言えなかった。だから、些細なことだけど自分にとっては新しい展開だったと思う。
でもそんなこと言ってやっぱり螺旋から降りたくないから、仕事もなんでもいいわけじゃないんでしょとも言われた。そんなふうに図星を突かないで欲しい。才能もないのにプライドだけが高い。

 

20200419

あまりにも風が強くて家が揺れてる。というより、家が軋む音がすごいので風が強いんだなと思う。
先輩が家を離れているので、ちゃんと全ての窓を閉めて、全ての部屋の明かりを消してから寝る。誰に見られていなくても歯を磨いて明かりを消して布団に入るとき、自分のことを本当に正しく可愛い存在。と思う。でもわたしが一人暮らしをしたことが無いだけで、世の中の人の多くは一人で寝る支度をしてるんだよな。それってすごいことだと思う。誰にも見られていないところで、その人がその人として存在していることに対して昔からウーッと思う。夜も山は山であることや、今も東京の川が流れ続けていることに対しても同じ気持ち。小さい頃は、ディズニーランドも教室の自分の席も、自分がいない時にも存在してるんだよな。と思っては鳥肌を立てていた。この気持ちには名前がついているんでしょうか。


20200420

先輩が帰ってきたのでピザを頼んでビールを飲んだ。
ビールを一缶飲んだだけで泥酔してしまい、居間の床で撃沈。

 

20200421

昨日の泥酔を引きずって昼まで寝ていた。ピザと一緒に食べたポテチが良くなかった気がする。でも気のせいかも、どうだろう、と昨日残したポテチを食べて確認したらやっぱりお腹を壊した。

4月に入ってから状況は悪くなる一方だけど、気持ちは明らかに楽になった。今までは何もかも自分の責任なんだと思うしかなかったけど、今就職できないのはわたしの責任じゃないし、わたしだけじゃなく全員やばそうだし、わたし個人の問題じゃなくなったから。

休日なので先輩とシュークリームを買いに行く。調子に乗ってケーキも3つずつ買う。いちごのオムレットとフルーツロールとチョコレートのタルト。ここのシュークリームは皮が薄くて生クリームとカスタードがどっちり入っていて重たい。ちょっと垢抜けない味も可愛い。
川に行ってシュークリームを食べた。いつものベストスポットは日陰に入ってしまっていたので、謎の小さい階段を降りて水面ギリギリのところにしゃがんで食べた。先輩と交代で双眼鏡を使って鳥を観察した。カイツブリと、大きな黒い鳥を見た。

 

20200422

朝、駐車場にテーブルと椅子を出してケーキを食べた。はだしに日光を当てると気持ち良い。

StayHomeが流行りに流行ってて、間違っても花見に行ったとか言えない。散歩に出たことすら言いにくいかんじ。言外に外出する人を責めているみたいで息苦しい。自分も間違えそうになる。感染しない/させないために気をつけるのはもちろんだけど、感染した人を責めるのも外出していた人を責めるのも違うはずなのにな。この状況下でも働かなきゃいけない人もいるし、はやく休業補償が出て欲しいし、それぞれ自分にはわからない事情があるかもしれない、ないとしてもお互いを監視し合うのは息苦しすぎる。監視し合う空気が本当にきついけど、そうさせている仕組みに腹が立つ。「自粛」で乗り切ろうとするんじゃなくて、ちゃんと休業補償を出してほしい。みんなできるだけ健康であってほしい。

夕方、帰宅したら先輩がオンラインミーティングしている横で浴槽のお湯が溢れまくっていた。少なくとも30分以上はお湯を出しっぱなしにしていたらしい。ミーティングの横からお湯止めたよをこっそり伝えたら、先輩は声を出さずにアワアワしていた。
お風呂に入ってから、シャワーから冷水しか出ないことに気付く。さっきまではお湯が出てたのに。まさかガスを使い切ったとか?仕方ないので浴槽のお湯を汲んで全身を洗った。後で先輩も同じ方法で入浴するはめになる気がしたので、浴槽のお湯をなるべくこぼさないよう、中腰をキープしたままお湯に浸かる。

 

20200423

引き続きガスが使えないので、オムレツ作りもできず。代わりに昨日食べられなかったチョコレートのタルトを食べた。
昼前にはコンロが復活。

お昼ごはんを食べたらハローワークに面談に行こうと思っていたんだけど、先輩が車で出かけたまま帰ってこない。そのうち帰ってくるかなあとぼんやりしてたらあっという間に夕方になってしまった。
せっかくの休日なのにあまりにも何もしていないことに焦ち明るいうちからお風呂に入ることにする。湯船で「あなたはいま、この文章を読んでいる。」を読む。

 
20200424

昼前、先輩と買い物に行く。本屋で今村夏子の「木になった亜沙」を買った。誕生日に読む用。誕生日に何を読むか、毎年悩むのが楽しい。できれば大好きな作家の新刊が良い。去年は舞城の「されど私の可愛い檸檬」をわざわざ取っておいて読んだ気がする。
帰りに近所の八百屋さんでトマト、カブ、晩柑を買う。去年好きなお店で飲んだ晩柑ソーダが美味しかったから真似したい。

車で温泉街のあたりを通ったら、明らかに営業していない宿が多くて悲しい。毎晩かかさずに狂ったショーをやっている旅館すら週末しか営業していないらしい。50年以上毎晩続けてきたショーなのに。でも、お客さんのいない宴会場で狂ったショーだけが続くところを想像することはできる。80万本のチューリップが、刈り取られず、誰にも見られないところで咲いて枯れていくところを想像することはできる。

夜、近所の居酒屋さんなどがお弁当を売っていないか先輩とチェックしに行く。気に入っていた焼き鳥屋さんが5月からお弁当を始めることを知る。引き続き店舗の営業もがんばります!とポスターが貼ってあった。迷ったけど、潰れてほしくないし応援したいという気持ちで、普通にお店に入ることにした。
こういうのもネットに書くと白い目で見られるんだろうな。でももうみんなで監視しあうの疲れたし、家にいる間に好きだったお店は潰れていくんだし、正しいかどうかはわかんないけど自分にできることとして自分の住んでいる町にお金を落とそうと思う。まあわたしもお金無いので応援されたい側なんだけど。
焼き鳥屋さんに入る前に検温があって、当たり前のようにレーザーガンみたいな検温機を向けられたのでちょっとびっくりした。今後これが日常になるのかしら。
いつも満員のお店なのに、わたしたち以外にお客さんはもう一組しかいなかった。焼き鳥は美味しかった。先輩とユーチューバーになるとしたらどんな動画作るかを話し合い、わたしが青空文庫の作品を朗読する動画でひと稼ぎしようと決意。