仮暮らしの人生

 

20200411

仕事をもらうことが決まった矢先、明後日から職場の休業が決まった。仕事自体は無くならないものの、世の中のムードがすごい勢いで変化していくのを感じる。こんなにまでなると思ってなかった。わたしの住んでいる県は感染者20名くらい。東京に比べたら少ないけど、ここ数日で一気に増えた。

お金が無いことによって自分が嫌な人間になっているのを感じる。気持ちに余裕が無い。特に、一緒に住んでいる先輩と金銭感覚がずれてきているのを感じる。主に食に関して。
お金がちゃんとあってほしい。食うに困るまでは至らないけど、普通に周りの人との関係性がおかしくなっていくから、ちゃんとお金があってほしい。


20200412

例の首相の動画が流れてきて衝撃の朝。
最初クソコラだと思って笑ってたら公式だった。ああいうクソコラを誰かが作って、政府が火消しに躍起になる方がまだリアリティがあった。そっちの方が何倍も健全だったと思う。

もう全然笑ってる場合じゃないけど、具体的に何をどうしたら変わるのかあんまり想像がつかない。成功体験が無いというか。

 
20200413

糸井重里のツイートについて、それが不当な扱いを受けた人の口を塞ぐようなメッセージだったからずっと怒ってる。いまの状況だからというより、いつ発せられてもわたしは怒ってたと思う。
「他人を責めるのって良くないよね」みたいなふわっとした言葉で声を上げにくい空気を作るのって最悪だと思う。今回のことだけじゃなくて、痴漢とかレイプとかパワハラとかで同じ構図をもう何度も見てきたはず。
わたしは「あなたさえ黙っていればわたしたちはいままで通り平和な日常を送れる」みたいな言動を許せないし、ちゃんと怒らないとそれは伝わらないと思う。言い返してもしょうがないって黙ってる間に、言い返せない人が増えてしまうの嫌だし。
このメッセージを正当な批判に対するものではなく誹謗中傷に対するものとして受け取っている人の反論も見たけど、どっちとも取れるような言い方をしていること自体全然良くない。批判と誹謗中傷を一緒くたに考えること自体がアウトだと思う。そもそもこれを書いたのは元広告屋で、その自覚が無いはずない。
当たり前のことだけど、みんなが怒ってて、そういう状況に疲れてしまうことはあると思う。それはちゃんと休んだほうがいい。でもわざわざ他人を責めるのやめようってメッセージを発する必要はない。
あと他人が怒ってるのこわ〜いみたいなこと言ってられるのって生活が保証されてる人だけだなと思う。自分の周りがいつも通りであって欲しいってだけなんだろうな。

 

20200414

住居確保給付金について問い合わせるも、シェアハウスに住んでいる場合は申請できないと断られてしまった。賃貸の名義が自分じゃないことと、同居人と世帯が分かれているとはいえ実態はわからないから、というのが理由らしい。名義のことはまだ納得できるとしても、実態がわからないって何?通話を切ってからスマホを投げて、居間を転げ回った。悔しくてウグーッと唸ってもみた。無力。
自分は受けられなかったけど、代わりに同じくコロナで無職になった友人に電話して給付金のことを教えてあげた。問い合わせたら、友人の地域では書類を郵送でやりとりできるとのこと。友人に教えてあげたことで、この経験が人の役には立ったというか、自分が断れたことも無駄ではなかったというか、ウグーッとなった気持ちが成仏していくかんじがした。

買い出しついでにミスドに寄ってドーナツをたくさん買う。先輩に「ミスドで一番好きなドーナツ言って」って電話したら、結局山盛りのドーナツを買うことになった。
家の目の前の川べりにキャンプ用の椅子とテーブルを出して、ドーナツを食べた。先輩は15分後にミーティングはじまっちゃうとか言ってたけど無理やり連れ出した。家の中で食べるより野外で食べた方が絶対おいしい。川べりとはいえ普通の道ばたなので、通りすがりの人がめちゃくちゃ見てくる。

 

20200415

母の誕生日なのでLINEを送る。
いまだ家族にこの状態を報告していない。転職先が決まってから報告しようと思ってたらどんどんハチャメチャに巻き込まれて、ここまで来てしまった。辞めたことを報告しても自己責任だと言われるだろうし、それが辛いし、ならわざわざ伝えなくていいかと思う。
家族との距離を自分で調整できるようになってよかった。大人になって一番よかったことだと思う。

政府のやることなすこと悪い予想をはるかに飛び越えて最悪で、ずっと怒っていて疲れる。自分の怒りに向き合うのってものすごくパワーを消費するし、その状態で自分のタガが外れないように自分のことを監視しておくのが難しい。
でもここで怒らないと、自分がちゃんとした生活を望んでいい人間じゃなくなってしまうかんじがする。(他人にも怒れと言ってるわけではないです。自分の話)せめてもうちょっと安心して暮らしたい。自分はそれを望んでいい人間なんだと思いたい。何もかも諦めて、いま仕事もお金も無くて途方に暮れてるのが全部自分の責任だと思うのはしんどすぎる。

 

20200416

また川に散歩に行く。送別会でもらった双眼鏡も持って行く。
前回見つけたベストスポットを覗きに行ったら、知らないおじさんが昼寝をしていた。いいな。めちゃくちゃ気持ちよさそう。仕方ないので橋を渡って、反対側のベストスポットに行く。天気が良すぎて日焼けしそう。アオサギダイサギと亀とでかい魚を見た。

なんか物音する?と思ったら、最近家の近所に引っ越してきたNさんがヨッスとか言いながら普通に家の中にいた。窓際でたばこ吸ってるわたしの姿が見えたから遊びに来たらしい。本当にただなんとなく寄っただけらしく、先輩にも挨拶して帰って行った。

夜、また茶トラの猫を見た。向かいの家の駐車場で、車止めのフリするみたいなかんじで座ってた。わたしたちの車のヘッドライトに照らされても、余裕で香箱を組んでいた。先輩と「堂々としてるな」「肝が座っとる」などと言いながらしばらく猫を観察した。車を降りて探しに行ったらもういなかった。あの時の猫かどうかはわからない。

 

20200417

ひたすら風が強い日。

先輩と、車を持っていない元同僚とちょっと離れたたばこ屋さんへたばこを買いに行く。しばらく困らないように買い溜めする。商店街でずっしり重たいクレープも買った。元同僚を家まで送り届けて、そのまま家の前でしばらくキックボードで遊んだ。キックボードは思ってたよりスピードが出る。こんなに地面が近いことと、自分の身体がまあまあの速度で移動していることを意識するのがかなり久しぶりだった。夕方に人の家の前でダラダラ遊ぶなんて小学生ぶりかもしれない。

以前一緒に働いていた人から、関西で人を探してるところがあるよと紹介してもらう。ふたつ伝手があるらしい。どっちもフルタイムではないけどどちらも掛け持ちすればなんとか暮らせるかも、とのこと。
もうひとつ見つけた求人は北海道で、そっちも短期間の契約だからどっちもどっちだなあと思う。
この状況に巻き込まれるまでは、もうとりあえずの仕事じゃなくて、ちゃんと自分の部屋を持ってちゃんと給料をもらってちゃんと生活していきたい、と思っていたのだけど、まだ仮暮らしの人生が続きそう。

2月の日記を編集しながら、この頃はひたすら自己評価が低くて暴れまくってたなと思い出した。でも別にわたしは何もできないわけではなくて、できることだってあるし、仕事は自分のできることが生かせる場所に居ればいいんだし、そんなに肩肘張らなくてもよかったのかもしれないなと思う。仕事を頼まれたりするようになって自信がついたからそう思うのかもしれないけど。