変わらない結末に向かってあがく

 

20200321

最後の出勤日。仕事用PCの整理をしていたらふざけて撮った写真などがたくさん出てきた。これだけ距離が近くて楽しかったのに、こうやって出ていかなきゃいけないことってあるんだなと思う。

夕方、最後の挨拶をする。事務所に呼ばれて花束を渡されて、一言どうぞと言われる。みんなが笑顔で拍手してて、何だこれ、何なんだこれはと思う。何を喋ったか全然覚えてない。当たり障りないことを言ったと思う。その場を仕切っていた先輩も察してさっさと切り上げてくれた。
集合写真を撮る時、主役として真ん中に立たせてもらったけど、こんなことのために全員の時間を割きたくなくてはやく消えたい気持ちでいっぱいだった。わたしがそんなんだから他の人が笑いを取って間を持たせてくれて、結局みんなそっちを見ていた。こういうのってわたしのサービス精神が足りないってことなんだろうか?笑いを取っていた人は人間関係におけるサービスとしてそういうふるまいをしてくれていて、本当はわたしがそれをやるべきなんだろうか?わたしが知らないルールが本当は存在はあって、ただヘラヘラしているのも罪なのかもしれない。

帰ってからもらった花を生けた。花があるのは単純に嬉しい。起きたらすぐ目に入るよう枕元の机に並べてから眠る。

 

 

20200322

昨日の夜テイクアウトしたお寿司の残りを台所の床で食う。曇りで、一日中家のなかが暗い。

先輩が「ワンダと巨像」をプレイしているのを見守る。10年前プレイしていたときはプレステ2だったけど、いまは4でリメイク版が出ているらしい。画質がかなり綺麗になっていた。
先輩が細い橋を渡るのに危なっかしい動きをしていたので、「そこ操作しなくてもアグロに任せてたらうまく渡ってくれるよ」と言いながら、そこがこのゲームの良さだったよなと改めて思った。

ワンダと巨像」をプレイしたら、アグロのことを好きにならざるを得ないと思う。アグロというのは主人公ワンダの愛馬で、黒毛で額に白い印のある、賢い女の子です。女の子なんです。広大な土地を駆け回って13体の巨像を倒していく間、ずっとそばにいてくれるのはアグロだけだ。神殿の女の子はずっと眠ってるだけだし、「ワンダと巨像」のヒロインってアグロだと思う。
時にはアグロがいないと倒せない巨像もいるし、何よりアグロはすごく賢い。走らせたら大抵の障害物は勝手に避けてくれるし、呼んだらどこにいても駆けつけてくれる。呼ばなくても、巨人から振り落とされた時なんか心配そうに駆け寄ってくれたりする。わたしが背から降りて調べ物してる間は暇そうに草を食んだり、そのへんに散歩に出たりしてしまうところも可愛い。
ゲームとしては、馬に乗ったまま崖から落ちてしまうって、まあ普通かもしれないけど、アグロは嫌がって崖の手前で止まってくれる。そういう描き方って誠実だなと思うし、ちゃんと生きてるんだって思う。

終盤、何度あの橋を渡りなおしたことか。もっと手前から走り出したら間に合うんじゃないか、連打したらなんとかなるんじゃないかって何度もリロードしてチャレンジした。プレイした人ならこの気持ちをわかってくれるんじゃないでしょうか。あそこムービーだから結局どうにもならないんだけど…どうにかなって欲しいって思うじゃん。変わらない結末に向かってあがくことも愛だ。

 

 

20200323

早朝に起きて友人に会いに行く。
バス停についてからマスクを忘れたことに気付いた。普段は田舎だからほとんど気にしていなかったけど、バスって三密だしよく考えたらやばいのか? コンビニに入ってもマスクが売り切れていたので、先輩に電話してマスクを一枚持ってきてもらう。マスクって本当に売り切れてるんだなと思う。

友人と合流。半年ぶりなのに、会ってすぐに髪を染めたことに気付いてくれて嬉しかった。ふたりで百貨店をぶらぶら歩く。普段は中国人観光客で賑わっているらしいけど、いまは人が少なくてガラガラ。気になっていたブランドでグロスをタッチアップしてもらう。タッチアップしてもらうのってかなり勇気がいるけど、友人が「この色試してみていいですか?この子なんですけど」とどんどん声をかけてくれる。一緒に来てもらってよかった。オレンジのラメ入りのグロスを一本買う。

香水はいくつか良いなと思うのがあったけど、無職が買うにはちょっと勇気のいる値段だった。仕事が決まったら買おうと思う。でもわたしが「夜の良いニオーイ」と呼んでいる匂いの香水が見つかったことが嬉しかった。「ユニセックスで使えるかんじが良くて…木とかハーブっぽいのが好きで…でもムスク?みたいなあったかい匂いも入ってると嬉しくて…」みたいなふわっとしたオーダーから、百貨店の香水売り場のお姉さんが本気で探してくれた。すごい。「アマゾンの森に降る雨の匂い」の香水らしい。何の匂いが入っているのか聞いてみたら、「これはびっくりされるのでお出しする前には言わないんですけど…実はキュウリの匂いなんです」とのこと。そう言われたらそんな気もするけど、みずみずしくてすごく良い匂い。すごく良い匂いですね!そうですよね?!とお姉さんと盛り上がる。わたしが「夜の良いニオーイ」と呼んでたのってキュウリの匂いだったんだ。

ひとりで観るのが怖いから付き合ってと言われて、友人と「ミッドサマー」を観る。わたしは二回目。友人はエンドロールが終わるやいなや「笑ってはいけないカルト村じゃん」と呟いて笑い転げていた。ラストシーンで、村人が「痛みを感じないように」って薬を飲まされたのに結局めちゃくちゃ痛がっていたのがツボだったとのこと。

わたしの辞め方について、友人が代わりに怒ってくれてありがたかった。いままで周りに関係者しかいなかったから、唯一気持ちをわかってくれる人に会って話すことができてよかった。
友人とはもともと一緒にバイトをしていて、その延長としてそれぞれ仕事をしてきたんだけど、この先のキャリアとか全然わかんないよねという話をする。上の人たちはフリーで仕事をしたり大学で教えたりバラバラだし、参考にできない。何を目指すべきなのか、自分で決めなくちゃいけないのってどうしてこんなに苦しいんだろう。
友人もなんと来年度いっぱいで職場が無くなることが判明したらしく、お互いがんばって生き延びようねと誓い合う。わたしたち自分の人生をやっていくしかない。

 


20200324

先輩と急いでお花見に行く。もう咲いちゃってるのでは?と焦って行ったけど、まだ一分咲きくらいだった。まだまだコートを着ていても外でじっとしておくのは寒い。日当たりの良いところで咲いている桜を眺めながらショートケーキを食べた。しばらく川べりで音楽を聴いてから帰宅。

就活を手伝ってくれた同僚の家に寄り、お礼としてプレスバターサンドを渡す。あまおう味の限定のやつ。もう明日には引っ越すらしくて、荷物がほとんど無くなっていた。「こうして見ると普通の家なんだよな」「もうIさんの家じゃないね」

夜は家で居酒屋さんごっこをする。レモン醤油のオクラ、梅と白だしかつおぶしとオクラを和えたもの、冷凍の水餃子、エリンギと鶏皮のバター醤油柚子胡椒炒め、鶏胸肉にネギ生姜醤油ケチャップ酢ごま油豆板醤のタレをかけたものなどを作る。ビールも飲んだ。

 

 

20200325

怒涛の面接ラッシュが終わった。今日受けた面接がたぶん最終で、ここに決まれば就活は終わりにしようと思う。引っ越しの実感はまだまだ湧かない。本当に引っ越すのか?
あとは人生が大きく変わっていくのを待つばかり。

明け方まで先輩がゲームしているのを見ていた。

 

 

20200326

いまから東京に引っ越すのって無謀では?と思い始める。昨日面接した時は東京に行くものだと思ってたけど…。内定をもらえたら、とりあえず二ヶ月くらいこっちで様子を見たいって交渉しようかな。その間はこっちで元職場の人の手伝いをするつもり。4,5月に手伝ってくれる人を探しているという話を聞いたときは、まあ本当に就活失敗したら当てにしようかな〜なんて言ってたけど、普通に頼ることになりそうだ。

日本博のオープニングセレモニーの中止が発表されたのがこの日。
「家族が自宅待機で嬉しがるイギリスの犬 尻尾を振りすぎてねんざ」のニュースもこの日。

 


20200327

元職場で国内外の出張が禁止になったらしい。ここ一ヶ月の間に首都圏に出張していた人もしばらく自宅待機とのこと。ここ数日で一気に空気が変わっているかんじがする。

就活の重圧から解放され、オタクアカウントで「id:INVAITED」の話ばかりしている。
舞城王太郎の「好き好き大好き超愛してる」単行本のみに収録されている短編「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」を未読であることに気が付き、即注文する。「キミトピア」「淵の王」など手元に無い作品も買い漁る。本って読むより買うときの方が楽しい。