いまここに自分の心があることに耐えられない

 

20200118

面接に何を着ていったらいいかわからなくなり、「オフィスカジュアル」で検索して洋服の青山のページを眺める。

 

 

20200119

「何をしたらいいかわからない」が続く。

わたしと、わたしと殺し合いをする同僚と、面接官をやる人と、いなくなる人の仕事を引き継いで過労死するだろう人とでミーティング。地獄ってこのことか。

 

 

20200120

わたしは面接に限らず親しくない他人と話すとき、よく「わたしは間違っている、あなたは正しい」という方向に話を持っていってしまう。なのに相手がそれに乗ってアドバイスなどをし始めるとは?お前に聞いてないが?とか思ってしまう。
ってことを書き出して気付いたけど、わたしはネガティブなことを言って「そんなことないよ」って言ってほしいだけなんだと思う。
自己肯定のために他人を使っているのって最悪だ。他人との信頼関係を築く手前でそうやって試すのも本当に良くないと思う。
わたしは自分で自分のことを認めなければいけない。自分で自分のことを正しいと思いたい。多分面接くらいで緊張しない人は、そもそも自分を肯定できているから大丈夫なんだと思う。わたしが過度に面接を怖がるのは、自分の評価を他人に全振りしているからかもしれない。

いまここに自分の心があることに耐えられない。

 

 

20200121

新しいコートをおろした。

友達と電話。面接の準備に足りない部分がたくさんあることに気がついて不安になる。
これまでやってきたことを事実として伝えることはできるけど、これからこういうことをやりたいですとかこういうことが好きですみたいなことが言えない。そもそも言える人はどうして言えるのかわからない。面接の足りなさを自分の人間性の足りなさのように思ってしまう。

夜、先輩が「そういえば俺も面接出ることになったよ〜」と言い出して、嫌すぎて泣いてしまった。
ずっと一緒に働いて一緒に暮らしてきて、身近な人のなかで唯一わたしをジャッジしない人間だったはずなのに、そういう人が急にジャッジする側にまわってしまったことがショックだった。
直前に友達と電話したことで不安が増しており、そのことについて先輩と話しながら整理しようと思っていて、でも面接官になるならこれ以上相談とかできないし、元気でやる気のあるところを見せなければ、でもどうしたらいいのかわからない、不安だ、でも不安だとか言ったら減点される、どうしよう、という気持ちが限界に達して泣いた。最悪だった。

 


20200122

良い問いと悪い問いのことを考えた。
面接のために「これから自分は何をしたいのか」とか考える。でもついつい「自分の好きなことを他人に話せないのはなぜか」とか「何が怖いのか」とか、面接自体には関係のない、内向的な問いばかり立ててしまう。
考えの方向性は問いによって決まるから、泥沼みたいに答えの出ないことばかり考えてしまうのは、問いが悪いんだろうなと思う。
わかっているけど、「どうして自分が悪いのか」を考えているときって他人に向き合わなくていい楽さがあるし、自分のことを考え続けるのは気持ちいいのでやめられない。「自分が悪い」っていう結論は変わらないのに。
自分が自分じゃなかったとしたら、どんな問いを立てさせるのがいいんだろう。

面接を終えた。

 

 

20200123

どうせ仕事が手につかないだろうと思って仕事を休んだ。
つめを全部違う色で塗った。

夕方、面接の結果が来ていることをメールの通知で確認する。どうしても開ける勇気が出なくてしばらく家の中をうろうろ歩き回った。
大学受験のときも、結果を見るのが怖くてしょうがなくて、職員室で泣き出した前科がある。いろんな先生が慰めに来てくれたけど、まだ結果も見ていないと知って呆れていた。
結果を見た瞬間にそのあとの人生の軌道が決まってしまって、その振り幅があまりに大きいことに耐えられない。それを誰のせいにもできず、自分ひとりで受け止めなくちゃいけないことを想像するだけで心臓が痛くなってしまう。どうせもう結果は決まっているんですけど。

意を決してメールを開けた。「ご期待に添えない結果となりましたので」以降の文章を忘れたけど、落ちているのを確認して、たばこを吸った。

 

 

2020124
昨日の夜、先輩が帰ってきてからしばらく結果の話ができず、いつも通りにふるまってお風呂に入り、晩ごはんを一緒に食べた。ごはんを食べ終えたあたりで、先輩が「結果見た?」と聞いてきたので、見たと答えた。どうせ先輩は面接の日には結果を知っていたんだから、何なんだろうと思った。受かったのがもう一人の同僚であることを聞いた。
結果を見る前は、いままで一緒に働いてきた同僚だけが受かって、わたしだけが落ちる場合、どういう気持ちになるかわからないと思っていた。どっちかというとそれを認められないだろうなと思ってた。でも純粋に良かったなと思えたので、良かったなと思えたことに安心した。彼女には良いところがたくさんあるし、夜の仕事までして生活している人間は報われるべきだと思う。
なぜわたしが選ばれなくて彼女が選ばれたのかという話を聞く。先輩の話を聞く限り、面接での印象が大きいように聞こえて、わたしがいままでがんばってきた仕事とかって何だったんだろうと思った。というかそもそもそんな話は聞きたくなかった。先輩は喋ったあとで、これは自分の罪悪感を拭うために話したのかもしれない、最悪、と言って後悔していた。わたしが落ちなければこんなことにはならなかった。
結果を見てからずっとぼんやりしていて他人事みたいに思っていたけど、「人と話すのとかアイデアを出すのとかが苦手っていうコンプレックスからこの仕事を選んで、そのことを隠して騙し騙しやってきたけど、やっぱりそれじゃダメだったってことだと思う。そういうコンプレックスを認めなきゃいけないと思う」って自分で言葉にした途端にボワボワ泣いてしまった。

朝、普通に出勤するのは絶対に無理だと思って休んでしまった。わたしを選ばなかった人たちや、選ばれた人と一緒に仕事をするの、今は無理だと思う。選ばれなかった人間が職場で泣き始めるのって最悪だし。

なんとか出勤させようとしていた先輩が、諦めてひとりで出勤していったけど昼に帰ってきて、体育座りして泣いているわたしをそのまま持ち上げて無理やり車に乗せ、一緒にマックのドライブスルーに行った。靴も履かないで寝間着でグチャグチャのまま食べるビックマックって美味しい。わたしのことをジャッジする側に回った先輩とはもう友達でいられなくなるなと思ってたけど、そんなことも無かった。物理的に笑うとちょっとだけ気持ちが楽になる。